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どれほどこの日を待ちわびたことだろう。
思い出すだけで涙が出てきそうになる。ジーコJAPANと共に歩んできた四年間。俺は二十代から三十代、結婚もしてそろそろ大人の分別がついてもよい年齢になってしまったが、ことサッカーに関してだけはまったく大人になれないでいた。あの青いユニフォームを見るとにわかに心臓の鼓動が高まり出し、知らないうちに「バモスニッポン」を口ずさんでいるという有様だった。 実際、W杯開幕の日が来るまではほとんど眠れない日々を過ごしていた。部屋の電気を消しても、中田、中村、三都主らの顔が目蓋の裏にあらわれては消え、どこからかあの「バモスニッポン」が聞こえてきてまったく眠れなくなってしまったのである。あまりに困って神経内科で睡眠剤を処方してもらったほどだ。電車の中で大黒やセルジオ越後の幻覚まで見るようになってしまった。いや、それは実際に大黒やセルジオであったのかもしれないのだが……。 そしていよいよ決戦当日。当然仕事にはまったく身が入らず、スポーツ新聞片手に友人と携帯で今日の段取りを打ち合わせする。 定時にタイムカードを押して新宿へ。いつもは怪しげなDVDを販売している露店も今日だけはサッカー関連の商品で賑わっている。 試合開始まであと三時間。さすがにまだ人は少ない。 到着の遅れている友人に携帯で連絡を。 束の間、同志たちとエール交換をする。 ようやく友人到着。 まだ時間があったのでゲーセンで「太鼓の達人」を。 気合いの連打でドイツに熱い思いを送る。 と、ここで問題が発生した。歌舞伎町コマ劇場前の広場ではサッカー日本代表のパブリックビューを行わないことが判明したのだ。何たる見通しの甘さ! 俺と友人は急いで近くのサッカーバーへ。 すでに試合は始まっていたが入場には成功した。さっそく腰を下ろして祈るような気持ちで戦況を見守る。頼むぞ日本! そして前半26分……。 ついに歓喜の瞬間が! 日本の先制ゴール! やったー! しかし前半終了、後半開始と時間が進むにつれて次第に雲行きが怪しくなっていく。 ビールの飲み過ぎでトイレでゲロ吐いている間に日本立て続けの3失点! そのまま試合終了! ロビーで頭を抱えてうずくまる俺。そして外に出てみると……。 日本惨敗のショックで若者たちがやけくそのモッシュ&ダイブをはじめ出した! このままでは歌舞伎町が無法地帯と化してしまう。石原都知事の浄化計画を邪魔する連中はこの俺が許さん! モッシュ&ダイブの嵐をくぐり抜け暴動の中心へとむかう。 ならず者たちに囲まれた! 羽交い締めにされ袋だたきに。 三十路のおっさん舐めるなよ! 長渕キックじゃ! 長渕キック! 長渕キック! 長渕キック! さあ、お前ら、そろそろやんちゃは終わりにしようぜ! 「わかりました、家帰りまーす!」と意外と素直な若者たち。 こうして歌舞伎町の平和は守られたのであった。 取材・文/玉手秀明
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