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実録版「同情するなら金をくれ」
風俗批評宣言

韓国人マーサッージ嬢と仲良くなった。普通のマッサージじゃない。最後にエッチなサービスのあるマッサージである。この手のお店は料金安くてサービス最悪、言葉通じないからコミュニケーション取れなくて、過剰整形で不自然な顔した寸胴小太り短足の女の子が多いのが特徴だけど、その子はスタイル良くて顔立ちは中の上といったところ、まあいわゆる「アタリ」の部類に入るタイプ。しかも日本語ペラペラで愛想良くて、サービス下手じゃないけど上手くもない、良い意味でプロっぽくない素人臭が出ていて、聞いてみたらまだ入店二日目なのだった。

「働いていた料理屋潰れて家賃払えなくなりました」
「大変だね」
「だからここに住んでます」
「え、ここに?」

昼間でも真っ暗でスタンドの明かりしかない二畳程度の狭い部屋。ここが彼女の生活場所。家財道具一切は友人の部屋に置かせてもらっている。この仕事をしていることは親はもちろん、友人の誰にも言ってない。一日の稼ぎは一万円から二万円、平日は客がまったくこないこともある(店舗型だが看板を出していないので)。親が病気で稼ぎの半分は送金。無駄金つかえないから朝は食パン一枚、昼食抜きで夜は出前のラーメンのみ。休みは隔週の日曜日。あとは二十四時間体制で客待ちをしているのである。

「客いないとき何してるの?」
「寝ている」
「ずっとここで?」
「そう」

ベッドの横の棚に日本語の学習帳があった。

「日本語勉強しているんだ」
「そう、私は一級とりたいです」
「いま何級なの?」
「二級です」
「一級とるとどうなるの?」
「普通の会社で働けるようになります」

一級の試験は年に一度しかないらしい。会話はほとんど大丈夫だけど、漢字が苦手だからもっと勉強しないといけないと言って彼女は照れ臭そうに笑っていた。

「試験、頑張ってね。あとラーメンばっかり食べていたらダメだよ。体悪くするよ。たまに飯ぐらい奢ってあげるから、遠慮なく電話してね」
「わかった、きっとする」

絶対に掛けてこないだろうと思っていたら、帰りの電車の中で電話が鳴った。彼女がメールを送ってきたのだ。「優しくしてくれてありがとう」という言葉の隣に、不馴れな笑顔の絵文字が添えられていた。

それから彼女と何度か食事に行って、三度目だったか四度目だったか、ホテルに行ってセックスをした。これが目的でなかったと言ったらウソになる。俺もウブなガキではない。ホテルでの彼女は店では上げない声を出した。終わった後に抱きついて離れなかった。それなりに満足感もあるにはあったが、なぜだか少し切ない気持ちになった。

食事とセックスの関係が数カ月ほど続いた。隔週で一度くらいだったろうか。そのパターンが崩れたのが、つい先月のことだった。一週間連絡がなく、次の週も連絡がなかった。深入りしたくなかったので自分から電話はしたくなかったが、我慢できずに結局、携帯電話を手にしていた。

「元気?」
「元気じゃないよ」
「どうして?」
「おなか痛い」
「大丈夫?」
「大丈夫じゃない、病院行った。薬もらってきた」

声に抑揚がなく明らかに元気がない。会話の合間にズズーッ、ズズーッと何かを啜る音が聞こえてくる。

「何の音?」
「お湯飲んでる。服脱ぐと寒い」
「仕事してるの?」
「仕事しないと病院行けない」
「休みなよ、体壊しちゃうよ」

しばらくの沈黙の後、彼女は俺にこう言った。

「ならあなた、お金くれる? 私、あなたお金くれるならいつでも仕事辞めるよ」
「……それはできない」
「どうして?」
「俺、金持ちじゃないから」
「うそつき、あなたこのお店に遊びにきたでしょ。お金たくさん持ってるでしょ」
「持ってないよ、本当だよ」
「うそつき」

電話が切れた。

以後、彼女とは一度も会ってない。電話もメールも一切ない。彼女の体調が回復していることを、一級の試験に合格して俺のことなんかきれいさっぱり忘れてくれることを、心の底から願っている。ただ、それだけ。


他に言うことはない。

文・写真/松澤信之

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