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最近、テレビのお笑い番組等でよく聞く「空気を読む」という言葉。「空気」というのは「その場の気分、雰囲気」という意味、「読む」とは「察する」という意味で、続けると「その場の気分、雰囲気を察する」という意味になる。実際につかわれる場合は「誰々(もしくは特定の集団)は空気を読まない」と否定形でつかわれることが多く、おそらくテレビタレントの誰かが多用しはじめた言葉だと思うが、あまり詳しく調べてみるつもりはない。いや、一切ないといっていい。ただ、この言葉はいまの時代を象徴するキーワードの一つとなっていることは確かだと思う。
たとえばある一つ話題で盛り上がっている集団(数人から数十人程度)がいたとして、その盛り上がりを著しく損なう発言ないし行動を取った者、これは「空気を読まない」者になるらしい。ただ、その判断はあくまで当集団内において為されるものであって、その集団が満員電車内でギャーギャーピーピー騒いでいたとして、それをいさめるつもりでその内の誰かが「その盛り上がりを著しく損なう発言ないし行動を取った」としたら、その誰かは集団内では「空気を読まない者」になるかもしれないが、一方で満員電車内のその他の客(百人程度)にとっては「空気を読む者」になる可能性もあり得る。これはなかなか面白い。
そもそもなぜ「空気」なんてものを読んだり読まなかったりしなければいけないのかというと、人間なんて放っておくと好き勝手なこと(盗んだり殺したり)をし出すから、ある一定の秩序が必要だと。その秩序というのは昔から偉い人が宗教とか法律を作って大勢の人に広めてきたわけで、とここまで書いて、これはちょっと「空気」というのとは違うな、と思った。いま書いてみたのは「空気」というよりむしろ「規範」で、「空気」はもっと及ぶ範囲が狭いというか、その場、その場で即興的に立ち上がってくるものだから、うまく言葉で説明することができない。それくらい「空気」はややこしい。ただ「規範」も「空気」も特定の集団内に同調の圧力がかかるという点では一緒で、その枠からはみ出ると非常に恥ずかしい思いをしたり、それなりの罰を与えられたりする。
つまりテレビのお笑い番組等で「空気」を読む読まないなんて言葉がよく聞かれるのは、そこで絶えず同調の圧力が生じているからであって、まあ、それがないと番組の進行が滞ったりして大変だろうからしかたがない部分もあるにせよ、一方でお笑いとは世間一般に何となくある雰囲気とか気分を小馬鹿にする、転倒させるからこそ痛快なのだという一面もあるはずで、だからこそその場の「空気」を絶えず膠着状態に陥らせるタモさんの駄々っ子ぶりや、「空気」そのものをぶち壊してしまう爆笑問題太田の毒舌なんかに自分は爽快感を覚えるのだけれど(おそらく意図的にそれをやっているというのも含めて)、最近のダウンタウンがいまいち昔ほど面白くないと思えるのは、かつて何かをぶち壊したり、膠着状態に陥らせていた彼らの芸が、いまは同調の圧力を増す方向へと転化しているからではないのか、と思ったりしたが、このむやみに屁理屈めいた長文を書くこと自体も、立派に「空気」を読んでいない行為かもしれないので、本当はもっといろいろと書きたいことはあるけれど、本日はここら辺でごめんください。
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いつも、興味深く読ませていただいております。
ところでARCTIC MONKEYSなるバンドをどう思いますか?
Posted by 大学中退消防士 | 2007-08-13 12:17
件のアークティック・モンキーズ、あまりたいしたことはない、と断言したいところなのですが、最近は若手のバンドをほとんど聴いていないので自信はありません。と、謙虚に言ってみたものの、ロックってのは現在における宗教の一つのようなもので、近いうちにその大部分が淘汰されるにちがいないという確信めいた思いもあったりします。まあ、映画でも音楽でも本でもたくさん見て聴いて読んで次から次へと忘れていくのが一番じゃないでしょうか。
Posted by 玉手秀明 | 2007-08-14 00:41
空気が読めない質問に丁寧なお答えありがとうございます。
ARCTIC MONKEYSについては私も同意見です。
Posted by 大学中退消防士 | 2007-08-14 09:24
もし君が「空気の読めない質問するな、何がアークティック・モンキーズじゃい、死ね!」という解答に期待していたのだとしたら、その空気を読めなかったのは非常に残念です。
Posted by 玉手秀明 | 2007-08-14 16:35
いえ、本当に師匠のARCTIC MONKEYSの評価を知りたかったのであります。しかし、自分がここまでARCTIC MONKEYSにこだわる理由もよく分かりません。
Posted by 大学中退消防士 | 2007-08-14 17:14
面白かったです。
「空気」という表現がまさに、最近の世相を如実に表していますね。
「規範」と使うと重くなるから、広義にとらえさせるために「空気」と用いる。でも、だからこそそのものの本質が見づらくなるんですよね。
だから、私は「空気を読め」という言いまわしは好きではありません。この言いまわしを使う人が、都合の良いように使えるからです。
満員電車の例を出していますが、もっと深刻な例としては「みんながいじめているから、私もいじめないと『空気読めない人』になっちゃう」とかね。
「空気を読まずに壊す」こともまた大事じゃないんですかね。
Posted by けい | 2007-09-02 23:55
ご感想ありがとうございます。
テレビの場において「空気」を壊すという態度は少数派のシンパシーを得られる可能性がありますが、一般社会でそれを行うと完全に孤立する可能性もあるので注意が必要だと思います。いずれにせよ、大勢の人が同じ方向にドーッと進むのは見ていてあまりいい気分ではありません。
Posted by 玉手秀明 | 2007-09-04 01:37